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革修理ブログ
2025/12/11
革と登山 ― 自然と人をつなぐ古くて新しい素材

登山と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、ゴアテックスなどの防水素材や高機能ナイロンを使った最新の登山ウェア、軽量なトレッキングシューズではないでしょうか。確かに現代の登山装備は、化学繊維を中心に発展してきました。しかし、登山の歴史を紐解くと、「革」は長きにわたり人と山とを結ぶ重要な素材だったことがわかります。
革は防水性・耐久性・保温性に優れ、古くは山岳民族や冒険家たちが必ず身につけていた素材でした。現代においても、革はその“自然と調和する質感”や“使うほど味が出る経年変化”によって、登山文化の中に独自の存在感を保ち続けています。
この記事では、「革と登山」という一見異なるようで深く結びついたテーマを掘り下げ、歴史・実用性・メンテナンス・そして現代登山での活用法までを総合的に解説していきます。
19世紀、アルプス登山が盛んになったヨーロッパでは、現在のような合成繊維は存在せず、登山装備の多くが革で作られていました。ブーツ、ベルト、ザック、手袋、ロープ固定用のハーネス、さらにはピッケルのグリップ部分までもが革で覆われていたのです。
革は動物の皮をなめすことで作られ、耐久性と柔軟性を兼ね備えていました。特に登山靴においては、厚手の牛革が重宝され、険しい岩場や雪上を長時間歩くための必需品でした。革靴は足首までしっかりと固定でき、適度な硬さがありながら、履き込むことで足になじむ特性を持っていたのです。
20世紀初頭になると、「ノルウェージャンウェルト製法」と呼ばれる技術が確立されました。これは、登山靴のソール部分を厚い糸で二重に縫い付ける方法で、防水性・耐久性が格段に向上しました。この製法は現在でも高級登山靴やクラシックブーツに採用されており、伝統的な職人技の象徴とされています。
この時代の登山靴には、イタリアの「スカルパ」や「ラ・スポルティバ」、ドイツの「ハンワグ」など、現在も続くブランドの原型が見られます。いずれも革を主素材とし、「人間の足と自然の地形をつなぐ道具」として進化を続けてきました。
なめされた革は、水をある程度はじき、内部への浸透を遅らせる特性を持ちます。加えて、内部の繊維構造が密なため、風を通しにくく、冬山登山では防寒性にも優れていました。オイルを染み込ませたオイルドレザーやワックスレザーはさらに防水力を高め、雪山でも頼れる素材として重宝されたのです。
革の最大の魅力の一つは「通気性」です。現代素材のように完全防水ではないものの、革は内部の湿気を吸収し、外へ放出する“呼吸する素材”です。これにより、足の蒸れを軽減し、長時間歩行でも快適さを保ちやすいという特徴がありました。これは登山のような過酷な環境で大きな利点となりました。
革は繊維の構造上、繰り返しの摩擦や変形に強く、使用者の体型や動きに合わせて自然に形を変えていきます。たとえば、革製の登山靴は履き込むほどに足の形に馴染み、“自分専用の靴”に育っていく。これが革製品特有の「育てる楽しみ」として登山家の心をつかみました。
現代の登山靴は多くが化繊素材に置き換えられましたが、革製ブーツは依然として根強い人気があります。特にヨーロッパ製のフルグレインレザー(銀面付き天然皮革)ブーツは、登山愛好家の間で“最後の相棒”と呼ばれるほど信頼されています。
フルレザーのブーツは重く、メンテナンスも必要ですが、適切にケアすれば10年以上使用できる耐久性があります。高山よりもむしろ中低山、トレッキング、キャンプなどにおいて、その安定性と快適性が見直されています。
登山用ザックのベルトやバックル周辺には、今でも補強用として革が使われることがあります。革の耐摩耗性はナイロンよりも高く、負荷が集中する部分を長持ちさせるのに適しているためです。また、クラシックスタイルのバックパックブランド(例:ドイツの“ドイター”の復刻モデル)では、デザイン面でも革がアクセントとして活用されています。
登山では手を守ることも重要です。革手袋は岩場でのグリップ力が高く、ロープ作業や薪割りなどにも適しています。鹿革や山羊革の手袋は柔らかく、耐久性と操作性を両立しています。特に冬山では、ウールのインナーと組み合わせることで保温性を確保しながらも作業がしやすいという利点があります。

20世紀後半になると、ナイロンやポリエステル、ゴアテックスなどの合成繊維が登場し、登山装備は一変しました。軽量・防水・透湿という革の弱点を補う性能が評価され、世界的に主流となります。革は「重くて手入れが大変」という理由で、徐々に登山の現場から姿を消していきました。
しかし、これは単なる世代交代ではありませんでした。化学素材は“機能の極致”を求める登山者には理想的でしたが、同時に“自然と向き合う感覚”を薄れさせたという指摘もあります。革が持っていた“自然素材としてのあたたかみ”や“長年使い込むことで生まれる信頼感”は、決して代替できるものではありませんでした。
近年、登山ファッションやキャンプ文化の中で「クラシックスタイル」が人気を集めています。レトロな登山靴や革製ギアを使い、自然の中で“モノを育てる”感覚を楽しむ人が増えているのです。革靴ブランド「ダナー(Danner)」や「パラブーツ(Paraboot)」のブーツは、街でも山でも履けるデザインとして再評価されています。
環境意識の高まりとともに、革は“天然素材”として再び脚光を浴びています。近年では、植物タンニンなめしによるエコレザーや、副産物としての皮を有効利用したレザーが登場し、「サステナブル登山ギア」としても注目されています。
革は「長く使うことで環境負荷を減らす」素材でもあり、適切なケアをすれば10年、20年と使い続けられる。これは使い捨てが当たり前になった現代において、非常に価値あることです。
革製品は使うだけでなく、手入れを通して「育てる」楽しみがあります。以下では、代表的な革登山ギアのケア方法を紹介します。
適切にケアされた革靴は、使うほどに足になじみ、艶が増し、世界に一つだけの表情を見せます。
革手袋は使用後に陰干しして湿気を飛ばし、レザークリームで軽く保湿します。ベルトやザックのパーツも乾燥やカビを防ぐため、長期保管前には軽くオイルケアしておくと良いでしょう。

現代の登山は、技術と機能性に支えられた“安全な挑戦”の時代です。しかし、だからこそ「革」がもたらす感覚的な価値が見直されています。
革の重さ、手触り、温かさ、経年変化それらは、自然と向き合う行為そのものを豊かにしてくれるのです。
山に登るたびに風を受け、雨に濡れ、太陽に焼かれながら少しずつ変化していく革製品。それは、持ち主と共に時を刻み、思い出を刻む“もう一人の登山仲間”と言えるでしょう。
登山は装備だけでなく、心の持ち方でも変わります。
革と共に登る旅は、便利さの先にある「原点回帰の登山」。
自然と一体になり、自分自身と向き合う時間を与えてくれるそんな深い魅力を秘めているのです。
革研究所 札幌店
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