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2025/11/20

世界の革産業の全体像

世界の革産業の全体像

革産業は「原皮の生産(農畜)→原皮流通→鞣し(タンニング)→加工・製品化→輸出入・販売」という長いバリューチェーンで構成されています。原材料である牛・豚・羊・水牛などの「原皮(hides & skins)」は農業・畜産の副産物として発生し、これを有効利用して高付加価値の革製品(靴、バッグ、服飾小物、インテリア等)へと加工します。世界的には牛革が占める比率が最も大きく、FAO などの統計では牛・水牛等の占める割合が高いことが示されています。

原皮全体の供給は畜産動向に強く依存しますが、最終的な革の鞣し・仕上げや高付加価値製品の生産は地理的に集中・分業化しており、「原皮の産出国」と「加工・製品化(鞣し・縫製・ブランド化)を担う国」は必ずしも一致しません。近年は中国が原皮調達・加工の大きなハブになっているほか、ブラジルなどの畜産国からの原皮輸出や欧州の高級革加工(イタリア等)といった分業構図が継続しています。

革とミシン

主要な産地とその特徴

以下に、主要国・地域ごとの特徴とマーケット上の役割を整理します。

中国 — ボリュームと加工のハブ

中国は原皮の消費量・輸入量ともに世界最大級の位置にあり、特にライトボヴィン(軽質牛革)をはじめとする大量の原皮を加工する能力があります。近年の報告では、中国が原皮消費の大きな割合を占め、グローバルな原皮輸入でも高いシェアを持つとされています。原皮を輸入して鞣し・仕上げし、そのまま国内向けの革製品製造あるいは輸出する流れが強い点が特徴です。

ブラジル — 原皮(牛)供給の中核

ブラジルは世界的な牛肉生産国であり、それに伴う原皮の供給量も非常に大きい国です。原皮の輸出も盛んで、中国向けの輸出が大きな割合を占めるなど、原料供給国としての地位が確立しています。ただし、森林破壊(特にアマゾンに関わる課題)やトレーサビリティの問題が国内外で大きな注目を浴びており、サステナビリティ関連の圧力が強まっています。

インド・パキスタン・バングラデシュ等(南アジア) — 低〜中価格帯の加工地

インドやパキスタンは革の鞣し加工、縫製・仕上げの工程で重要な役割を果たします。特にインドは水牛や小型家畜の革を用いた市場があり、革の多様性(種別)が比較的大きいのが特徴です。人件費の面や技術蓄積により、幅広い価格帯の製品を扱います。南アジア諸国は原皮の国内供給と加工を組み合わせ、主に中低価格帯の靴・ベルト・小物で世界市場に供給しています。

イタリア・フランス(欧州) — 高級仕上げとデザインの中心

イタリアは長い革加工の伝統と高い仕上げ技術を有しており、高級革製品、特にバッグや靴の“ブランド”・クオリティで世界的に知られています。欧州は革の最終付加価値化(デザイン、仕上げ、ブランド化)に強みがあり、輸出金額ベースで重要な位置を占めます(欧州連合全体の輸出が上位に来るデータもあります)。

トルコ・ベトナム・メキシコ等 — 成長著しい加工国

トルコは欧州向けの中価格帯〜一部高価格帯の革製品でシェアを広げており、ベトナムは縫製産業の強さを背景に革製品の加工で存在感を増しています。メキシコは北米市場向けの供給拠点として機能するなど、地域ごとに役割分担が進んでいます。

世界シェアの見方 — 原皮(供給) vs 鞣し・製品(加工・輸出)

「世界シェア」を語る際には二つの観点が重要です。

  1. 原皮供給(生産)シェア:畜産国(ブラジル、米国、アルゼンチン、オーストラリアなど)が原皮の大きなソースになります。これらは畜産規模や種別(牛、羊、水牛など)によって寄与度が異なります。FAO系の統計や各国の貿易データは原皮の供給量・輸出額の把握に有用です。

  2. 加工・製品シェア(鞣し・最終製品):ここでは中国やインド、イタリア、トルコ、ベトナムといった加工国のプレゼンスが重要です。特に中国は原皮の大量消費・加工拠点であり、欧州(イタリアなど)は高付加価値品で強みがあるため、数量ベースと金額ベースでシェアが大きく異なります(数量=中国、金額=欧州高級品の割合が高くなる傾向)。

データ例として、輸出金額ベースではEU諸国や中国、イタリアなどが上位に並ぶ一方、原皮の輸出入(原料トレード)においてはブラジルやアルゼンチンなどの畜産国の存在感が大きい、という二極構造が見られます。

革ジャンと小物

輸出入と貿易動向(近年のトレンド)

  • 中国の原皮依存:近年、中国が原皮の主要な輸入国・加工地としての地位を強めており、世界原皮マーケットの“消費地”としての比重が増しています。これにより原皮価格や供給チェーンが中国需要に大きく左右される傾向があります。

  • ブラジルの外需依存と懸念:ブラジルの原皮輸出は増加している反面、持続可能性(森林破壊)やトレーサビリティに関する国際的な懸念が高まっています。環境基準やバリューチェーンの監査要求が強まれば、取引構造の変化が起こり得ます。

  • 欧州の高級需要変動:消費動向の変化(インフレや購買意欲の変化)や地政学的要因で高級革製品の需要は波があります。例えばイタリアの一部地域では輸出額の落ち込みが報じられることもあり、地区産業が影響を受けています。

環境・倫理問題と規制の影響

革は「畜産業の副産物」という側面がある一方で、畜産自体が温室効果ガス排出や土地利用の面で環境負荷を抱えます。加えて、鞣し工程は大量の水使用と化学物質(クロムなど)を伴うため、廃水処理や労働環境、安全性の観点からも規制と改善要求が高まっています。国際的には「森林破壊のリンク排除(deforestation-free)」やトレーサビリティ、化学物質管理に関する基準を求める動きが強まっており、サプライチェーン全体でのコンプライアンスが今後さらに重要になります。

ブランド側も消費者の倫理観やESG要求に応じて、代替素材の検討や動物福祉・トレーサビリティの強化、クロムフリー鞣しや節水技術の導入などを進めています。これにより“革=伝統産業”から“管理された持続可能な産品”へとイメージ転換を図るケースが増えています。

 

技術・付加価値化の潮流

  • 高度な鞣し・仕上げ技術:イタリアなど欧州のタンナーは、伝統技術と近代的な化学処理を組み合わせ、高付加価値の表面仕上げや染色技術を提供しています。

  • デジタル・トレーサビリティ:ブロックチェーン等を用いたサプライチェーンの可視化が進み、一部ブランドは個々の製品に由来情報を付与し、消費者に開示しています。

  • 代替材料との共存:合成皮革や革に似た新素材(ラボグロウン、植物由来素材など)の研究開発が進んでおり、用途や価格帯によって棲み分けが進みます。これらは一部市場での競合要因になっています。

地域別の課題と将来展望

  • 南米(ブラジル等):原料供給の中心だが、環境・森林問題で国際的なプレッシャーあり。取引条件の厳格化や証明制度の導入が進む可能性。
  • 中国:加工ハブとしての地位は強いが、労働・環境コスト上昇や規制強化で加工拠点の多様化(東南アジア等)も進む。
  • 欧州(イタリア等):高級革の優位性は継続するが、需要変動に応じた柔軟な事業戦略が必要。
  • 南アジア・東南アジア:コスト競争力を背景にした加工拠点としての成長余地あり。労働環境・環境規制対応が成長の鍵。

    いろいろな革財布

まとめ(要点整理)

  1. 世界の革産業は「原皮供給国(例:ブラジル等)」と「加工・製品化国(中国、インド、イタリアなど)」に機能が分かれ、数量ベースと金額ベースでシェア構造が異なります。
  2. 中国は原皮消費・加工の中心地として大きな影響力を持ち、ブラジル等の原料供給国との連動が強いです。
  3. 環境・倫理・トレーサビリティへの国際的要求が高まり、サプライチェーン全体での対応が必須になっています。特に森林破壊問題はブラジル産革に関する国際的懸念を引き起こしています。
  4. 今後は高度な仕上げ技術、トレーサビリティの導入、代替素材との共存等が業界のキーになる見込みです。

店舗情報:革のことなら何でも!

革研究所 札幌店

住所:札幌市北区北34条西3丁目1-7北34条ビル1F

電話番号:011-600-6858

営業時間:平日10~19時

修理対応エリア:北海道 札幌市全域エリア

革研究所HP:https://sapporo-kawa-kenkyujyo.com/

革修理対応製品

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革鞄・バック

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革の鞄(カバン)のスレやキズの補修、変色、革の色を変える(カラーチェンジ)までお任せください。VUITTON(ヴィトン)GUCCI(グッチ)等の革ブランド品も修理可能です。

財布・小物

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革財布(サイフ)、小銭入れ、キーケース等の小物全般の革のキズ、スレをキレイに修理いたします。CHANEL(シャネル)GUCCI(グッチ)等のブランド革小物の修理ももちろんOKです。

革靴・ブーツ

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ソファー・椅子

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革ソファー・革の椅子の修理実績も多数ございます。痛み具合によっては革の張替えも可能です。カッシーナ(CASSNA)等のブランドソファー修理もお気軽にご相談ください。

自動車内装

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革研究所 札幌店

代表者 城台 悦史
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TEL 011-600-6858

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