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2025/12/23

革とモンゴル ― 大地と遊牧が生んだ“革文化”の物語

革とモンゴル ― 大地と遊牧が生んだ“革文化”の物語

馬に乗るモンゴル人

はじめに:草原と革の国、モンゴル

果てしなく広がる大草原、乾いた風が駆け抜け、羊や馬が群れをなす国モンゴル。
この広大な土地で生きる人々にとって「革(レザー)」は、単なる素材ではなく、生きるための知恵であり、文化そのものといえる存在です。

モンゴルでは古来より遊牧生活が営まれており、家畜の毛や乳、肉だけでなく、皮もまた貴重な資源として生活の隅々に活かされてきました。
ゲル(移動式住居)、馬具、衣服、靴、太鼓、そして装飾品までそのどれもに革が深く関わっています。

この記事では、そんなモンゴルの「革」との関係を、歴史・文化・産業の観点から詳しく紐解いていきます。

1. モンゴルの自然と革文化の始まり

過酷な自然が育んだ“革の知恵”

モンゴルの気候は寒暖差が非常に激しく、冬はマイナス40℃、夏は40℃を超えることもあります。
さらに乾燥した風が吹き、森林も少ないため、木材よりも家畜由来の資源特に「革」は生活に欠かせない素材でした。

遊牧民にとって、革は“自然と共に生きるための盾”でもありました。
革は防水性・防風性に優れ、柔軟性もあるため、衣類や靴、テントの外皮として最適。
この環境こそ、モンゴルに独自の“革文化”を根付かせたのです。

2. モンゴル遊牧民と革の生活

(1)ゲルと革

モンゴルの象徴ともいえる移動式住居「ゲル」。
木の骨組みにフェルトを張り、その上を革で補強する構造が一般的です。
革は風雨を防ぎ、骨組みの結束材としても使われます。

特に馬や牛の生皮を乾燥させた革紐は、極めて丈夫で伸びにくく、ゲルを固定する重要なパーツとして重宝されてきました。
革の強さは、風速30mを超える草原の嵐の中でもゲルを守る力を発揮します。

(2)衣服と靴

モンゴルの伝統衣装「デール(deel)」は、もともと厚手の布や革で作られていました。
寒冷な気候に対応するため、羊革や鹿革を使ったデールは保温性に優れ、柔らかく体に馴染みます。

靴に関しても、革の技術が光ります。
モンゴルの伝統的な靴「グータル(gutal)」は、つま先が上に反り上がった形が特徴で、馬に乗る際に足を守る構造。
牛革や馬革を何層にも重ね、底を厚く仕立て、草原や岩場でも丈夫に使えるよう工夫されています。

(3)馬具 ― モンゴルの魂を支える革

モンゴル人にとって「馬」は単なる移動手段ではなく、家族の一員であり、誇りの象徴です。
そのため、馬具の製作にも特別な思いが込められています。

鞍(くら)、手綱、鐙(あぶみ)などはすべて手作業で作られた革製品
馬に負担をかけないよう、革の柔らかさや厚みを細かく調整する職人技が受け継がれています。
馬と人を結ぶ「革の絆」は、まさにモンゴル文化の核心といえるでしょう。

3. 歴史の中の革 ― モンゴル帝国の時代

世界を駆け抜けた“革の軍団”

13世紀、チンギス・ハーンによって築かれたモンゴル帝国。
彼らが世界を征服できた背景には、革を活かした軍装備の存在がありました。

当時のモンゴル兵は、軽量で柔軟な革鎧(レザーアーマー)を身に着けていました。
これは動きやすく、防御力も高い上に、馬上戦に非常に適していました。
さらに、革で作られた弓のケースや矢筒、鞍袋などは携行性に優れ、遠征先でも迅速な戦闘を可能にしました。

つまり、モンゴル帝国の“スピードと機動力”を支えたのは、まさに革だったのです。

交易と革の広がり

モンゴル帝国はユーラシアを結ぶ広大な交易ネットワークを築きました。
その中で、モンゴル産の革や毛皮はシルクロードを通じてヨーロッパや中東へ輸出されていきました。

特に馬革や羊革は高品質で知られ、
イタリアやトルコの革細工師が好んで使用したといわれています。
このようにモンゴルの革は、世界の革文化の発展にも大きな影響を与えてきたのです。

鷹匠

4. 現代のモンゴルにおける革産業

(1)遊牧と革産業の共存

21世紀の今も、モンゴルの人口の約3割が遊牧生活を続けています。
そのため、家畜由来の革資源牛、羊、ヤク、馬、ラクダの革が豊富です。

モンゴル政府は2000年代以降、「モンゴルレザー」のブランド化を進めており、革製品の輸出は年々拡大しています。
特に、羊革を使った手袋やバッグ、靴は品質が高く、ヨーロッパ市場でも人気を集めています。

(2)伝統とモダンデザインの融合

ウランバートルを中心に、若いデザイナーたちが伝統と現代ファッションを融合させた革製品を生み出しています。

たとえば、モンゴルの伝統文様を刻印したレザーバッグや、馬具のデザインを取り入れたブーツなど。
これらはモンゴルらしさを保ちながらも、都会的で洗練された印象を与えます。

また、エシカルファッションの観点からも、自然放牧で育った家畜の革を無駄なく使うモンゴルの手法は注目を集めています。

(3)革なめし技術の発展

かつてモンゴルでは伝統的な植物タンニンなめしが主流でしたが、
近年は環境に配慮した新しい技術が導入されています。

モンゴル国内には複数の近代的なタンナリー(なめし工場)が稼働しており、
EU基準に合わせたエコレザー製造も進行中です。

これにより、モンゴル産の革は品質と安全性の両面で国際的評価を得つつあります。

5. 文化と革 ― 心の中に生きる“素材”

革に宿る“祈り”と“魂”

モンゴルの伝統儀式では、革は神聖な素材とされています。
たとえば、馬の革で作られた太鼓(ドンガラガ)は、祭事や祈祷の際に欠かせない神具です。
太鼓の音には「大地と天をつなぐ力」が宿ると信じられています。

また、狩猟や放牧の際に革製の護符を身に着ける風習もあり、
それは“自然の恵みへの感謝”と“命の循環”を象徴しているのです。

芸術としての革細工

モンゴルの革細工師(アルガチン)は、
代々受け継がれる技術で革を加工し、美しい装飾を施します。

鞍の金具や革ベルト、ブーツの縫い目には、独特の模様や刺繍が刻まれています。
それは単なる装飾ではなく、家族の繁栄・健康・安全を願う祈りの形でもあります。

今日ではその繊細なデザインが、国内外のファッションブランドや工芸品としても高く評価されています。

6. これからのモンゴル革 ― サステナブルな未来へ

モンゴルは今、環境保全と産業発展の両立を目指しています。
放牧の増加による砂漠化や過放牧問題が深刻化する一方で、
革の生産工程でも廃水や薬品使用の課題が指摘されています。

そのため、モンゴルでは近年、

  • 植物性なめしへの回帰

  • リサイクルレザーの導入

  • 地場デザイナーと環境NGOの協働
    といった新しい試みが始まっています。

モンゴルの革産業は、自然と共に生きてきた文化を守りながら、
持続可能な未来を築こうとしているのです。

馬とゲル

まとめ:革がつなぐ、人・自然・歴史

モンゴルにおいて、革は単なる素材ではありません。
それは自然からの贈り物であり、命の証であり、文化の記憶です。

草原の風にさらされた革の手綱、家族を守るゲルの革紐、
祖先の魂を宿す太鼓の革どれもがモンゴルの歴史を静かに語りかけています。

現代のファッションや工芸においても、
モンゴルの革はその「原始の力強さ」と「人間らしい温もり」で世界を魅了し続けています。

革を通して見るモンゴルは、まさに「大地と人が共に生きる国」
その革文化は、これからも変わらず、世界中の人々に自然の美しさと生命の尊さを伝えていくことでしょう。

 

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住所:札幌市北区北34条西3丁目1-7北34条ビル1F

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