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2025/09/17

日本における革製品の伝統

日本における革製品のはるか昔から今までの軌跡

はじめに

革製品は人類の生活史と切り離すことのできない存在である。狩猟採集時代、動物を食料とした後に残る皮は、住居や衣服、道具に利用されることで命をつないできた。特に日本列島においては、縄文期から弥生期、古代国家の成立、中世・近世を経て、近代の工業化、そして現代のファッションやライフスタイルに至るまで、革は常に人間の営みと深く結びついてきた。

本稿では、日本における革製品の歴史的軌跡を、古代から現代までの大きな流れに沿ってたどり、その社会的役割や文化的意義を明らかにしていく。

日本の甲冑

1. 縄文時代:狩猟民と革の始まり

縄文時代(約1万6000年前〜紀元前300年頃)の人々は、狩猟採集と漁労を基盤に生活していた。動物の皮は、衣服や靴、住居の覆いとして利用されたと考えられている。

発掘された遺跡からは、動物の骨や角を加工した道具が多数見つかっているが、革自体は有機物で腐敗しやすいため、直接的な証拠は限られている。しかし、当時の寒冷な気候条件を考慮すれば、毛皮やなめした革は衣服や寝具として不可欠であったことは容易に推察できる。

また、動物の皮を乾燥や燻煙で保存し、原始的な「なめし」を行っていた可能性がある。これは現代の革製品の源流であり、人類にとって「捨てる部分のない」資源利用の一例といえる。

2. 弥生時代:農耕社会と革の進化

弥生時代(紀元前300年〜3世紀頃)になると、稲作農耕が定着し、社会は大きく変容した。弥生人は狩猟に加えて農耕具の使用を広げていくが、革の役割も多様化したと考えられる。

例えば、農耕用の縄や器具の補強材、弓矢の弦を保護するための革、武器の鞘や防具の素材などである。弥生時代の青銅器や鉄器とともに、革は生活と戦闘の両面で利用価値を高めていった。

さらに、対外交流の痕跡も注目される。中国や朝鮮半島から渡来人がもたらした技術の中に、革の加工法が含まれていた可能性がある。こうして革は、農耕社会と戦士集団の双方に欠かせない素材へと成長していった。

3. 古代(飛鳥〜奈良時代):律令国家と革文化

飛鳥時代から奈良時代にかけて、律令国家が成立し、中央集権的な政治体制が整う。この時代には、革製品が「国家権力の象徴」として利用されるようになった。

代表例が馬具である。律令制における軍事組織は騎馬戦術を重視し、馬の鞍・轡・鐙などに革がふんだんに使われた。特に奈良時代の正倉院には、鮮やかに彩色された革製馬具や靴が収蔵されており、当時の高度な染色・加飾技術が伺える。

また、役人や貴族の靴にも革が用いられ、革は身分を表す象徴的素材として重んじられた。中国大陸から伝来したなめし技術が国家的に管理され、革職人は律令制の官司に属して働いていた記録もある。

4. 中世(平安〜室町時代):武士と革の結びつき

中世に入ると、武士の台頭とともに革の需要は飛躍的に拡大した。戦闘の主力となった武具や馬具には、大量の革が必要とされたのである。

特に有名なのが甲冑である。鎧の小札(こざね)は金属だけでなく革でも作られ、漆で塗装することで耐久性を高めた。革は軽量で加工が容易なため、金属よりも動きやすい防具として重宝された。

さらに、弓の弦巻きや太刀の鞘、武士の履物である「革足袋」など、武家文化は革と密接に関わっていた。平安末期から鎌倉時代にかけて登場する「陣羽織」にも革製の装飾が施されることがあり、戦場の美意識を支えていた。

宗教面でも革は独特の意味を持った。仏教では殺生が戒められる一方で、武士社会の現実的需要から革細工は不可欠であった。そのため、革職人は被差別民とされ、のちの「皮多(かわた)」や「穢多(えた)」と呼ばれる人々の職業基盤となっていった。これは日本の社会史における負の側面でもある。

ナイフ

5. 近世(江戸時代):都市文化と皮革産業

江戸時代になると、戦乱が収束し平和な時代が訪れる。武具としての革需要は減少するが、庶民生活や都市文化の中で革は新たな役割を担った。

代表的なのは履物である。革を用いた足袋や草鞋、下駄の補強などが広まった。また、武士の刀の鞘や印籠の紐部分、商人の財布や袋物にも革が使われ、身近な生活資材となっていった。

江戸では皮革職人が「河原者」として都市の外縁部に居住し、皮の加工や靴修理を生業とした。幕府は皮革の需要を把握し、職人の組合組織を通じて管理を行った。これにより、日本の近世皮革産業の基盤が整えられた。

また、輸入品として西洋の革靴や鞄が入ってきたこともあり、革の可能性が再び注目されるようになった。

6. 近代(明治〜昭和):革の工業化と大衆化

明治維新は、日本の皮革産業に革命をもたらした。西洋式軍隊の導入によって、軍靴や馬具、ベルトなどの需要が爆発的に拡大したのである。

政府は東京や大阪に皮革工場を設立し、ヨーロッパの最新技術を導入した。これにより、従来の伝統的な革細工から、近代的な皮革工業へと移行が始まった。

昭和初期には、学生カバンやランドセル、ビジネス用の鞄、革靴が一般庶民にも普及し、革製品は「ハレの品」から「日常の必需品」へと変わっていった。また、戦時中には軍需品として膨大な革が使われ、戦後は進駐軍を通じてさらに西洋的なデザインが持ち込まれた。

7. 現代(平成〜令和):ファッションとサステナビリティ

現代の日本における革製品は、実用品であると同時にファッションアイテムとしての側面が強い。財布、鞄、ジャケット、靴といった製品は、ブランドやデザインによって多様化し、個人のライフスタイルや価値観を映し出すものとなった。

一方で、環境や倫理の観点から革産業は新たな課題にも直面している。動物愛護の観点からフェイクレザーやヴィーガンレザーが注目され、再生素材を用いた製品も増えている。

日本の職人文化は依然として健在であり、姫路や浅草といった地域では高品質な皮革製品の生産が続けられている。クラフトマンシップと最新技術の融合によって、日本の革文化は世界からも高く評価されているのである。

古い鞄

まとめ

縄文時代の原始的な皮利用から、律令国家の馬具や武士の甲冑、江戸の町人文化、明治の工業化を経て、現代のファッション産業へ――日本における革製品の歴史は、人々の暮らしと社会の変化を映し出す鏡であった。

革は単なる素材ではなく、権力や身分、文化や価値観を象徴する存在であり続けた。そして現在、サステナビリティや倫理観と結びつきながら、新たな未来を模索している。

はるか昔から今まで続く革の物語は、これからも日本人の生活と共に歩み続けるだろう。

 

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